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【視察レポ】宮崎県椎葉村katerieに行ってきました!

6月29日〜30日で、宮崎県椎葉村にあるkaterie(かてりえ)という交流拠点施設に視察に行ってきました!

椎葉村は日本三大秘境の一つ。人口も2300人ほど、山林面積は9割後半、令和2年度(あわくら会館と同い年)にkaterieをオープン。

元々、やってみん掲示板の取り組みを真似してみたいとお声がけをいただいたり、スタッフが知り合いだったりと、つながりや共通点のあるの図書館に、ついに伺うことができました。今回はそのレポートをしたいと思います!

◎katerie、ぶん文Bunとは?

katerieは、図書館(ぶん文Bun)やコワーキングスペース、キッズスペース、交流ラウンジやものづくりLab、キッチンなどを兼ね備えた村の交流拠点施設です。

館内に卓球やボルダリング、滑り台などもあり、自然と「遊び」が生まれてしまう交流拠点だなと感じました。
西粟倉・あわくら会館との共通点も多いと感じました。

あわくら会館同様の、階段と滑り台。
Katerieでは危なくないよう滑りにくいコーティングがされていました。
3Dプリンターや西粟倉にもある「Shop Bot」などが置かれていました。
西粟倉村内の「むらの工作室」が複合されているイメージ。
(画像出展:katerie HP)
西粟倉村内にある木製楽器製作企業「mori no oto」さんの楽器もありました!

◎「かえりたい」をつくる、ぶん文Bun。

ぶん文Bunの大きな目標は、UIターン者を創出することだと伺いました。
通常、図書館や複合施設として目標数値は「本の貸し出し数」や「来館者数」など、施設内で完結しそうな目標になりそうであるが、椎葉村の基本理念「かえりたい『郷』で生きていく。」に沿って、UIターン者数を指標に置いたとのこと。

だからこそ、ただ人に来てもらう・本を借りてもらうための施設で終始するのでなく、村内外に向けた「村のブランディング」を意識しているそうです。

ぶん文Bunのマスコットキャラクター「コハチロー」は、ニホンミツバチ。
気に入った巣箱に帰ってくるという習性を、UIターンにかけているそう。

◎特色あるミッションを持つ司書たち。

ぶん文Bunの司書さんには、それぞれ肩書きがついています。
立ち上げを担った、前図書館司書の小宮山氏は「クリエイティブ司書」

そして現在、移動図書事業を行う「飛び出す司書」、デジタルアーカイブ事業を行う、「時起こす司書」、広報業務を中心とした、「灯り照らす司書」の3名が、地域おこし協力隊の制度を使い移住し司書活動をしています。

単なる「司書」ではなく肩書きをつけることによって、ミッションが明確になるし、本来持っている「司書」という仕事の専門性が際立つのではないでしょうか?

◎セレンディピティが生まれる書架

ここが、ぶん文Bunでも力を入れている部分だと感じました。
あわくら図書館では日本十進分類法(=NDC)と呼ばれる分類を使っていますが、
ぶん文Bunでは、LENコードという仕組みで従来の書架に捉われない本棚作りをしています。

ジャングルジムのような形状の書架。
単純に横一列に並べられるのでなく、上下左右に本が面陳(表紙が見える置き方)されていて、次から次へと気になる本が現れる。気づけば、奥へ奥へと本の森に迷い込んでしまいます。

(「風」「波」といった漢字一文字から、従来の図書館の概念に捉われないディスプレイ
画像出典;katerie HP)

普段本を読まないといった人でも、手にとってもらえるような工夫も多いです。
書架の間には、チョークアートの案内があったり、小説や漫画、写真集など手に取りやすい書籍が多数並んでいます。

「(心)日本人とは」の棚には、民俗学や歴史の本と並んで漫画「鬼滅の刃」が、、!

ちなみに、ぶん文Bunの蔵書のうち30%は漫画だそう!当初は半分漫画でも良いから、老若男女来る図書館を目指そうという声もあったというから驚きです。

一方で、「小説を買いすぎない」選書方針をしているという話を伺いました。
(小説が悪い・不要という話ではなく)

一般的に図書館では図書館分類でいう「9類」とされる小説や物語本は、貸出率も高く購入冊数も他の分類よりは多くなる傾向があります。

ですが、ぶん文Bunで9類の蔵書割合を全体の1割(芥川賞・直木賞など賢所な功績を残した本など)に抑え、図書館として購入すべきは「自分じゃ買えない本」だと話していました。

その理由は、
・目先の貸出数に捉われず、中長期的に重要な本を残していきたいから。
・新しい本は地元の書店で買って欲しいから。

あわくら図書館でも、独自の選書基準に沿って選書を行っていましたが、他の図書館さんの選書基準を聞くと参考にできる点が多いです。

小説は時代順に並んでいる。

◎インパクト大な企画力

ぶん文Bunが凄いのは、書架だけではありません。
図書館業界では類を見ない、インパクトのある企画力です。

・地域おこし協力隊として椎葉村に移住し作家を目指す「秘境の文筆家」

・原田ひ香さん×けんごさん対談「なぜ小説に生きるのか」

これらは、ただ著名な方を読んで話題を作りたい。
というよりも、いかに、椎葉村の掲げているミッション「かえりたい『郷』で生きていく。」につながっているかを重視しているそうです。

単純にイベントを行って終了ではなく、
・UIターンを促すブランディングにつながっているか?
・点で終わらせるのでなく次に繋がるのか
を意識していると感じました。


また個人的には、文化的飲酒イベントというのも面白いです。

ワインを嗜みながら行う、読書会。

図書館では飲食自由、そしてアルコールもOKであるという。
そんな施設の特徴と、椎葉村の課題を合わせたイベントと言えるでしょう。

こじつけのように思えるが、正当な理由を作れれば、一見難しそうな尖った企画も行えるのだなと感じました。

◎どうしたらこんな企画が生まれるんですか?


規模もそんなに変わらない、司書スタッフの人数もそんなに変わらない。
一方で、日本三大秘境と言われるくらいアクセスは悪い。

なぜ、こんなにも大胆で話題性のある企画が生まれるのだろうか。

一つに、katerieでは「禁止ルールを禁止する」といったルールを設けていること。
二つ目に、「無用の用」というミーティングを設けていること。

を、挙げていました。

前者は、館内の使い方やイベント内容に制限を設けず柔軟に対応していくためのルールとのこと。
例えば、「公共施設だから飲酒は禁止」と決めつけるのでなく、「文化的飲酒」というワードを使って、本や教養と結びつけながら、飲酒できるイベントを提案していくなど。

後者は、スタッフの中で行われる議題を設けない定期ミーティングのこと。
文字通り、役に立たないような無用なことでもあえて話す積極的雑談。
固く考えずに思ったことを出すからこそ、型にハマらない斬新な企画のタネが生まれる土壌が出来上がるそうです。


◎今後、どうしていきたいか?

椎葉村から熊本空港まで。
帰りの車中では、興奮冷めやらずあわくら会館・図書館でどんなことができそうか議論が進んでいました。

具体的には決定していないが、
・セレンディピティを生むような企画展示・書架づくり
・誰もが過ごしやすい館内の掲示やレイアウト
・型にハマらない企画作り
・施設としての目標数値の整理

などを、進めていきたいです。

katerie・ぶん文Bunの皆さんと集合写真。

短い時間でしたが受け入れていただいた、ぶん文Bun、Katerieのみなさんありがとうございました!